深夜酒類提供飲食店営業届が必要な要件と届出の手続きや注意点を解説
飲食店を開業する際、行政に対し、必ず提出が必要な届出と業態によって提出が必要となる届出があります。ここでは、後者の届出である深夜酒類提供飲食店営業届について取り上げ、その要件、届出の際の手続きや注意点などについて解説をしていきます。
目次
◆深夜酒類提供飲食店とは?
深夜酒類提供飲食店とは、深夜0時から午前6時までの深夜時簡帯に主に酒類を提供する飲食店のことを言います。ただ、飲食店といっても様々な形態があります。深夜時間帯に酒類を提供するすべての飲食店が深夜酒類提供飲食店に該当するのでしょうか?また、主に酒類を提供する飲食店とはどのような業態を指すのでしょうか?これらのあいまいな点について詳しく説明していきます。
警察庁生活安全局長が各地方公共団体の長らに発した風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準についての平成30年1月30日付け通達によると酒類提供飲食店営業の意義は以下のとおりとなります。
「酒類提供飲食店営業」とは、「飲食店営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。)」をいう。
(1) 「酒類を提供して営む」とは、酒類(アルコール分1度以上の飲料をいう。)を客に提供して営むことをいい、提供する酒類の量の多寡を問わない。
(2) 「営業の常態として」の解釈については、次の点に注意すること。
ア 営業時間中客に常に主食を提供している店であることを要し、例えば、1週間のうち平日のみ主食を提供する店、1日のうち昼間のみ主食を提供している店等は、これに当たらない。
イ 客が飲食している時間のうち大部分の時間は主食を提供していることを要し、例えば、大半の時間は酒を飲ませているが、最後に茶漬を提供するような場合は、これに当たらない。
ウ 「通常主食と認められる食事」とは、社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く。)、麺類、ピザパイ、お好み焼き等がこれに当たる。
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)
◇深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要な飲食店の業態は?
居酒屋、焼き鳥・焼きとん屋、立ち飲み屋、ダイニングバーなどの主にお酒を提供することを目的とした業態(アルコールがメインの業態で常態として通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く)がこれに該当します。ただし、これらの業態に該当するとしても、深夜0時から午前6時までの深夜時簡帯にそもそも同業態にて営業をしないのであれば、深夜酒類提供飲食店営業届は必要なく飲食店営業許可で営業することができます。
◇深夜酒類提供飲食店営業開始届が不要な飲食店の業態は?
ラーメン店、うどん・そば店、お好み焼き・もんじゃ焼き店、ピザ屋、牛丼屋、弁当屋、定食屋、レストラン、中華料理店などの主にお酒を提供することを目的としない業態(通常主食と認められる食事メインの業態)については、深夜酒類提供飲食店営業開始届は不要です。ただし、居酒屋など主にお酒を提供することを目的とする業態(アルコールがメインの業態)に変更する場合は、深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要となりますので注意してください。
◆深夜酒類提供飲食店営業開始届の要件
深夜酒類提供飲食店営業開始届をするにあたって、以下のとおり、場所的要件や営業所(店舗)の設備要件などいくつかの要件を満たす必要があります。
◇場所的要件
各自治体の条例によっては要件が異なりますが、おおむね、以下の用途地域においては営業禁止区域(深夜酒類飲食店営業ができない用途地域)となっています。
・第一種低層住居専用地域
・第二種低層住居専用地域
・第一種中高層住居専用地域
・第二種中高層住居専用地域
・第一種住居地域
・第二種住居地域
・準住居地域
・田園住居地域
※上記の例外として、住居地域および準住居地域については、商業地域の周囲30m以内にあれば営業することができます。なお、工業専用地域においては、そもそも飲食店の営業ができないので、当然、深夜酒類飲食店営業ができない用途地域ということになります。
用途地域についての詳細はこちら
〇飲食店と用途地域、その場所で出店・開業はできるのか!?
◇営業所(店舗)の設備要件
深夜酒類提供飲食店営業をするためには、風営法施行規則に則り、以下の要件を満たす必要があります。もし満たしていない状態で営業をすると、風営法違反となってしまいます。
・営業所内(客室内)の照度を20ルクス以下とならないような構造または設備であること。
・客室の床面積は9.5㎡以上とすること。ただし、客室の数が1室のみの場合は、特に制限はありません。
・客室内に見通しを妨げる設備(おおむね1m以上のもの)がないこと。
・善良の風俗または清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
・客室の入口に施錠設備を設けないこと。ただし、営業所以外の直接通ずる客室への出入口については特に制限がありません。
・ショーを見せるなど、深夜において客に遊興させないこと。
・営業所周辺における騒音または振動の数値が、各都道府県の条例で定める数値に満たないように維持されるために必要な構造または設備を有すること。
・営業所周辺において、各都道府県の施行条例で定める数値以上の騒音または振動(人声その他の営業活動にともなう騒音または振動に限る。)が生じないように、その深夜における営業を営まなければならないこと。
◇人的要件
風俗営業許可とは異なり、人的要件については要求されません。ただし、飲食店を開業するにあたって食品衛生責任者を店舗に置かなくてはならないのですが、食品衛生法にはそれになれない人が規定されています。
◆深夜酒類提供飲食店営業開始届に必要な書類
飲食店営業許可を取得したら、深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を作成し、必要な書類を添付して警察署に届け出ることになります。深夜酒類提供飲食店営業開始の届出に必要な書類は以下のとおりです。
・深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書
・営業の方法
営業時間や提供する飲食物等の詳細について記します。
・店舗の図面(平面図は必須となります。)
営業所平面図、営業所面積求積図、客室面積求積図、音響照明設備配置図など
・住民票(本籍地が記載されているもの)
個人の場合:営業者の住民票
法人の場合:役員全員の住民票
申請者が法人の場合は追加で以下の書類が必要となります。
・定款の写し(原本の確認が必要です。)
・登記全部事項証明書
上記は法によって提出が必要なものですが、それ以外もの警察所によって追加で必要となる書類があります。例えば、以下のような書類なのですが、これ以外にも必要となる書類が規定されている場合がありますので注意してください。必ず事前に所轄の警察署に確認してから申請するようにしてください。
・保健所の飲食店営業許可証の写し
・物件の賃貸契約書
・物件の使用承諾書
・用途地域が分かる書類(用途地域の証明)
・店舗のメニュー表の写し
参考:深夜酒類提供飲食店営業(様式一覧) 警視庁
◆深夜酒類提供飲食店営業開始届をするタイミング
まず、店深夜酒類提供飲食店営業開始届の前に所轄の保健所にて飲食店営業許可を取得しておく必要があります。その上で、店舗のオープン予定日の10日前までに所轄の警察所(生活安全課)を経由して都道府県公安委員会に届出をしなければなりません。なお、予約が必要な警察署とそうでない警察署があるので事前に電話で確認をしてください。あわせて、届出に際して必要な書類に不備がないかのチェックも忘れないでください。
◆同じ営業所(店舗)で風俗営業許可と併せて申請することはできるのか?
深夜0時までは接待のできる風俗営業、それ以降の深夜の時間帯は深夜酒類提供飲食店営業として二毛作にて店舗を営業することはできないので、どちらかを選んで申請することになります。ですので、風俗営業許可と併せて申請したとしても受理されることはありません。なお、風俗営業許可の必要な飲食業態は以下のとおりとなります。参考にしてください。
・1号営業:料理店、社交飲食店
キャバレーなどの設備を設けて客の接待をして客に遊興または飲食させる営業をする飲食店
例)キャバレー、キャバクラ、パブ、スナック
・2号営業:低照度飲食店
喫茶店、バーなどの設備を設けて客に飲食をさせる営業で、客席の照度を10ルクス以下として営む飲食店(ただし、1号に該当するものを除く)
・3号営業:区画席飲食店
喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食させる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営む飲食店
参考:風俗営業等業種一覧 警視庁
◆無届で営業した場合、どうなるのか?
風営法54条6号を確認すると、深夜酒類提供飲食店営業開始届が必要なのに、届け出なかった(無届)場合、50万円以下の罰金に処される可能性があることがわかります。罰金は、懲役や禁固と同じく前科となってしまうので注意してください。また、同法34条2項を確認すると、深夜酒類提供飲食店営業開始届を行わずに営業していることが発覚し、行政から提出するよう指導を受けたにもかかわらず、これに従わなかった場合、罰金のほか、最長で6カ月の業務停止処分を受ける可能性があることがわかります。これらは、そんなこと知らなかったではすまないことなので、必ず、店舗の営業開始前に深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出するようにしてください。
◆禁止行為
深夜酒類提供飲食店営業をする場合、近隣への迷惑行為の防止および未成年者を保護するための規制から以下の行為は禁止とされています。
・客引きをすること。
・客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、または、つきまとうこと。
・18歳未満の者を午後10時から翌日の日出時までの間客に接する業務を従事させること。
・18歳未満の者を午後10時から翌時の日出時までの間客として立ち入らせること(保護者同伴の場合は除く。)。
・20未満の者に酒類またはたばこを提供すること。
上記に違反すると、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金となってしまう可能性があります。(風営法50条1項4号)注意してください。
◆従業者名簿の営業所への備え付け
深夜酒類提供飲食店営業を営む者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所ごとに、従業者名簿を備え、これに以下の事項を記載しなければなりません。なお、従業者名簿は、従業者が退職した後も、その退職日から起算して3年を経過する日までは営業所に備え付けておかなくてはなりません。
・住所
・氏名
・性別
・生年月日
・本籍(日本国籍を有しない者はその者の国籍を記載する。)
・採用年月日
・退職年月日
・従事する業務の内容
※従業者の生年月日や本籍または国籍を記載する際は従業者より住民票、運転免許証、パスポート、外国人登録証明書等(在留カード)などを提出してもらいそれが事実であるのかの確認を必ずしてください。また、それらの写しを作成して従業者名簿と一緒に保管してください。
◆深夜酒類提供飲食店営業の変更届
社名や店名に変更があった、会社(個人)も住所が変更となったなど深夜酒類提供飲食店営業開始届出書の届出事項の記載内容に変更があったときは、変更があった日から10日以内(法人の場合で登記事項証明書が必要な場合は20日以内)に所轄の警察所(生活安全課)を経由して都道府県公安委員会に変更届出書を提出しなければなりません。これをほったらかしにすると届出義務違反となるので注意してください。なお、変更届出書を提出する際、以下の書類を添付する必要があります。
・営業の方法を記載した書類
・その他内閣府令で定める書類(営業開始届出書の添付書類のうち当該変更にかかわるもの)
参考:変更届出書(様式一覧)警視庁
◆深夜酒類提供飲食店営業の廃止届
深夜酒類提供飲食店営業をする飲食店を廃業した、または業態変更などにより深夜酒類提供飲食店営業を廃止した(ラーメン店や定食屋などの食事メインの業態となった)場合、そのから10日以内に廃止届出書を提出しなければなりません。廃止届出書には、廃止の年月日などの他、廃止の理由となった事実(廃止の事由)を具体的に記載する必要があります。
参考:廃止届出書(様式一覧)警視庁
参考:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律- e-Gov法令検索
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